LOVE & LIFE STATION

日本産科婦人科学会（理事長）
日本癌治療学会（第53回学会長、2015年京都）
日本癌学会（評議員）
日本婦人科腫瘍学会（理事）
日本分子形態学会（理事）
日本胎盤学会（理事）
日本周産期・新生児医学会（評議員）
日本内分泌学会
日本生殖医学会
日本臨床細胞学会
International Gynecological Cancer Society (Member)
International Society of Gynecological Pathologists (Member)
Asian Society of Gynecologic Oncology (President Elect)
American Association for Cancer Research (Member)
American Society for Reproductive Medicine (Member)
New York Academy of Sciences (Member)

「周産期」とは、妊娠22週から生後満7日未満までの期間をいい、この期間における妊娠・分娩・産褥期の健康や育児に関わるさまざまな身体的・社会的問題に対処するための医療を周産期医療と呼びます。その目的は、母児の異常を早期に発見、診断、治療し、社会に復帰させ、その健康を守りケアすることです。広くは妊娠前から分娩後まで、母体・胎児や新生児の生命、健康を守る役割を担っており、診療のみならず相談事業、教育事業など幅広く活動しています。

世界一安全に出産できる国、日本

周産期医療の実態を測るための重要なデータとして、妊産婦死亡率（お母さん ※1） と周産期死亡率（赤ちゃん ※2） があります。
今日これら2つのデータにおいて、日本の周産期医療は世界一の成績を誇っています。しかし、つい半世紀前までは、日本は諸外国に比べて大きく遅れを取っていました。
このテーマでは、日本における周産期医療の歩みをはじめ、世界各国との比較、生命の誕生を巡るちょっと面白いお話を通じて、世界に誇る日本の周産期医療についてご紹介します。

※1：

妊産婦死亡率とは、妊産婦10万人中の妊産婦死亡の比率を算出したものです。妊娠中又は妊娠終了後満42日未満（1978年以前は90日未満）の女性の死亡が対象で、偶発的事故を除いた、妊娠もしくはその管理に関連した又はそれらによって悪化したすべての原因によるものを指します。具体的には、妊娠時における産科的合併症による死亡や、妊娠前からの疾患又は妊娠中に発症した疾患が妊娠により悪化して死亡したものなどがこれに含まれます。

※2：

周産期死亡率とは、年間の1,000件の出産に対する周産期死亡の比率を算出したものです。周産期死亡は、妊娠満22週以後の死産、ならびに出生後満7日未満の早期新生児死亡で定義されます。

生殖補助医療（ART：Assisted Reproductive Technology）とは、自然の生殖能力が本来の役割を果たせない場合に、医療によりこれを助け妊娠に導く技術のことです。 体外受精・胚移植・顕微授精など 、一般的な不妊治療の中でも、より高度な技術が必要とされるものを指す傾向があります。

近年、世界の先進国において晩婚化と晩産化の傾向は高まりつつあり、これに伴ってARTの実施数も年々増加傾向にあります。
日本では、年間におよそ32人に1人がARTにより誕生しており、その数は今後も増加していくことが予測されています。しかし、ARTは卵子の老化を治療するための技術ではなく、晩産化や少子化といった生殖に関わる社会的課題の解決方法として考えられるべきではありません。このテーマでは、日本におけるARTの歩み、世界との比較を通じて、ARTの実績や傾向についてご紹介します。また、後半のトピックスでは、卵子の老化や、20代であれば、ほとんどの方がARTに頼らず妊娠・出産が可能であることなど、ご自分や大切なご家族、パートナーを守るために知っておくべき大切な情報についてご紹介します。

女性の身体は閉経後、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が減り、ついには男性の分泌量を下回ります。また動脈硬化、骨粗鬆症、認知症などの数多くの疾患が、これに関与していると見られています。平均寿命が延び続ける世界的傾向にある現代において、予防医学の観点から女性特有の疾患へ対応する女性医学の重要性が高まっています。女性のヘルスケアは、女性医学の発展のために生まれた概念であり、すべての女性のQOL向上に貢献することを目的としています。
日本では、女性の健康の包括的支援に関する法案が年内にも可決されると見られています。多くの日本人女性の健康維持に深く関係すると思われるこの法案について、日本産科婦人科学会も積極的に関わり貢献していく予定です。

日本は女性の平均寿命、平均健康寿命ともに世界一の国です。しかし平均寿命が年々延びる一方で、女性の閉経年齢はほとんど変化していません。
2000年、WHOは自立した健康的な生活を送ることができる平均的な年齢の指標として、平均健康寿命という概念を発表しました。平均寿命の伸びに合わせて、多くの国々がこの平均健康寿命をいかに延ばしていくか、という課題に取り組んでいます。平均寿命は今後も伸び続け、2000年に生まれた子どもの平均寿命は100歳を超えるという予測データもあります。このような時代に、女性の生涯を通じた健康的な生活を実現する女性医学の発展は必要不可欠と言えます。
このテーマでは、日本人女性の平均寿命の移り変わり、平均寿命の世界比較を通じて、平均寿命がどのように変化していったかについてご紹介します。後半では、女性とホルモンについてのお話を通じて、生涯的な健康維持に役立つ情報をご紹介します。

日本は周産期死亡率、妊産婦死亡率ともに世界一低く、世界で最も安全に出産できる国です。これは多くの医師、関係者による長年の努力により、実現・維持されているものですが、残念ながらあまり広くは知られていません。赤ちゃんは10ヶ月経てば自然に生まれるもの、という認識は日本では一般化しつつありますが、妊娠・分娩は世界的にみて、いまだに死亡原因の上位にみられる危険を伴うものなのです。日本では90年代から医療訴訟の件数が急激に増加し、特に予知が困難な症例が多い産科は、医師に過失のない医療事故に関する訴訟から医師と患者を守るための対策が必要とされてきました。

2004年に福島で起こった、通称 大野病院事件は、産科医が刑事告訴された初の事件として多くのマスコミにより報道されました。結果として、医師の過失でなかったことが立証されたものの、産科に携わる医師や、不幸にも発生してしまった医療事故からご家族を守るための補償制度の創設が急務となりました。こうして誕生したのが産科医療補償制度です。産科医療補償制度の設立後、分娩に関連した訴訟の数は急激に減少しました。
このコンテンツでは、近年における産婦人科に関連する訴訟の推移を通じた今日にいたるまでの流れ、本テーマにまつわるトピックスを通じて、産婦人科に関連した医療訴訟の今をご紹介します。

主に性交渉によりHPVというウイルスに感染後、これが長期化することで、5～10年もの期間をかけて細胞が癌化する病気を子宮頸がんといいます。
近年では、性交渉の若年化や出産の高齢化により、20～30代の患者が増加傾向にあります。

多くの神経や靱帯が密集する子宮頸部の手術は、技術的な難易度が高いとされています。日本では、京都大学の岡林教授による岡林式という、独創的かつ画期的な手術法が早くから確立され、受け継がれてきました。患者さんの術後の生活、QOLに配慮し、可能な限り神経を温存する日本の治療方針は、世界の医師達の考えをも変えつつあります。
このテーマでは、子宮頸がん手術の礎を作った日本人医師とその功績をまとめた子宮頸がん治療の歴史、世界における子宮頸がん検診受診率の比較、子宮頸がんに関する6つのトピックスを通じて、子宮頸がんという病気について広くご紹介します。